S-MM2H新要件(2025年1月から施行)

東マレーシアのサラワク州が独自に発行する長期滞在ビザ「サラワク・マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(S-MM2H)」。2025年1月1日から、要件が一部変更されるとサラワク州観光・創造産業・舞台芸術省(以降、MTCP)が発表しました。新基準では、保有資産の金額などが修正され、希望者にとってより厳格な条件が課されることとなります。(以下、1リンギット=35円で計算・2024年11月6日時点)

追記)サラワク政府から旧条件での申請受付は2024年12月15日までとのアナウンスがありました。2025年1月からの新条件での受付開始に向けスムーズな移行を目指し、12月16日から31日までの新規受付は停止するようです。

S-MM2H新要件

2025年から適用される新基準を現在の要件と比較してまとめました。

S-MM2H 旧(現行)新(2025年〜)
申請年齢30歳以上30歳以上
定期預金RM15万(525万円・単身)
RM30万(1,050万円・家族)
サラワクでの住宅、車の購入、医療、子供の教育の場合のみ、1年後に40%を引き出すことができる。
RM50万(1,750万円)
単身・家族同条件

サラワクでの住宅、車の購入、医療、子供の教育の場合のみ、1年後に50%を引き出すことができる。
マレーシア国外の収入証明(年金含む)月収入 
単身: RM7,000 (24.5万円)
家族: RM1万 (34万円)

OR

銀行預金
単身: RM5万 (175万円)
家族: RM10万 (340万円)
月収入
単身: RM1万 (35万円)
家族: RM1.5万(52.5万円)

OR

銀行預金
単身: RM10万(350万円)
家族: RM20万(700万円)
最低滞在日数年間合計30日以上年間合計30日以上 (主申請者のみ)
不動産購入不動産購入(居住用)は50歳未満の任意申請条件。

クチン地区:RM60万(2,100万円)以上
それ以外のサラワク州内:RM50万(1,750万円)以上
不動産購入は30歳代以上の任意申請条件。

クチン地区:RM60万(2,100万円)以上
それ以外のサラワク州内:RM50万(1,750万円)以上
(居住用としての扱いのため、売却は5年間不可)
期間10年(5年で更新)10(5+5)年、期間満了後に新規申請可能
MTCP 公式ホームページより

この改定で注目すべき点は、定期預金額と収入証明の金額変更です。

今までは、単身の申請者は15万リンギット(約525万円)、夫婦で申請する場合は30万リンギット(約1,050万円)をサラワク州内の銀行で定期預金をすることが条件でしたが、新要件では、申請者は単身でも家族でも申請1件につき50万リンギット以上へ引き上げられました。

また収入証明も単身者はRM7,000(約24.5万円)→RM1万(約34万円)、家族での申請の場合では、RM1万→RM1.5万(約52.5万円)と今までより9.5万円〜18.5万円多い月収が求められるようになります。

他の経済証明の選択肢として銀行普通預金もしくは母国の銀行での定期預金額の証明がありますが、こちらも倍額に引き上げられ、単身はRM10万(約350万円)、家族はRM20万(約700万円)となります。

すでにS-MM2Hを取得されている方にとって、気になるのがビザ取得から5年後の更新条件ですが、MTCPによると既存の取得者は申請時の要件での更新となるようです。

For renewal, the existing participants are still adhered to existing requirements.

(更新に際して、既存の参加者は引き続き現行の要件に従います。)

(ENHANCEMENT OF S-MM2H REQUIREMENTS より引用)

現在のS-MM2Hプログラム参加者は、ビザ取得から10年後のビザの満期時に、改めて新規でS-MM2Hを申請する際は、新要件を採用することになるようです。

州独自のライセンス発行体制の確立

今回の発表されたもう一つの変更点は、エージェントの管轄です。

S-MM2Hは、個人で直接申請するか、認可されたエージェントを指名するかを選択でき、直接申請の場合は、サラワク在住のサラワク人のスポンサーが必要です。したがって、外国人がスポンサーを見つけて直接申請するのはかなりハードルが高く、エージェントを通して申請をする方が多いかと思います。

サラワク州は、連邦政府からS-MM2Hエージェント管理についての権限を譲り受けたため、2025年1月1日からエージェントに対して独自のライセンスの発行できることになります。サラワク州に現在ある40社のビザエージェントは、再度ライセンスを取得する必要がありますので、日本からサラワクのエージェントにお願いする場合は、新たなライセンスを取得しているかどうかを確認することをお勧めします。

MTCP公式に発表されている認可エージェント(2024年11月5日更新版)

取得者数の増加と地域への経済効果

S-MM2Hプログラムは、2007年から2019年の期間において1,240人の承認が行われてきましたが、2020年以降、西マレーシアのMM2Hの休止や度重なる条件改定により、S-MM2Hに注目が集まったこともあり、取得者数は増加しています。2020年から2024年8月の4年間で1,462人が承認され、2023年には前年の22.9%増の542人が新たに承認されました。

このプログラムは、サラワク州の経済にも大きな影響を与えており、特に現地銀行の定期預金額で顕著です。2023年にはS-MM2H参加者による定期預金総額が5,670万リンギット(約20億円)に上り、2024年8月時点では新たに承認された取得者によって7,755万リンギット(約27億円)の預金が追加されました。こうした資金流入はサラワク州の金融機関にとって安定した経済基盤となり、地域経済にも大きな恩恵をもたらしていると言えます。

取得者の国籍と多様化

S-MM2Hプログラムの参加者の国籍は多岐にわたっており、トップ10は以下の通りです:

1. 中国(391人)

2. 英国(350人)

3. 台湾(262人)

4. 香港(255人)

5. 米国(210人)

6. シンガポール(207人)

7. 韓国(178人)

8. 日本(138人)

9. オーストラリア(121人)

10. インドネシア(117人)

高い承認率の背景

MTCPによるとS-MM2Hプログラムの承認率は100%近くあり、その高い承認率の背景には、事前審査の段階で申請内容が厳格に確認されていることが挙げられます。多くの場合、申請は健康診断や定期預金の設定などが確認されてからMTCPに提出されるため、用件が満たない申請が通過する可能性が低くなっています。

新基準が与える影響と展望

今回の経済条件の大幅な引き上げは、プログラムへの参加を希望する人々にとって影響があると予想されます。西マレーシアが発行するMM2Hプログラムの最低定期預金額が70万リンギットであることから、サラワク州は依然として移住希望者の流入を期待しているかもしれません。また、新しい要件で申請者が増えれば、サラワク州にとってもより安定した経済基盤の確保につながるでしょう。しかし、西マレーシアが2021年にMM2Hの要件を改定した際、申請者が90%減少したことを考えると、S-MM2Hが同じ道を辿らないためには、さらなる魅力の発信が求められるかもしれません。

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