海外移住、日本の住民票はどうする?

住民票

Head for Kuchingのサイトへようこそ!私たちは2024年に東マレーシア・サワラク州クチンの街に移住を目指している家族です。今後、私たちも移住する前に、日本で済ませておかなければならない手続きがありますので、調べた内容をまとめました。

この記事が参考になる方々

・移住を検討されている方

・出国の際、住民票を抜くか、残すか、迷っている方

・国民健康保険を利用している方(自営業など)

・家族で子連れ移住の方

・早期リタイアして移住する方

住民票を抜く?残す?

『住民票』を抜くのか?残すのか?この二択をどう選択するかによって、他の手続きへも影響が出てきます。「住民税」「健康保険」「年金」「学校」のポイントで調べた内容をお伝えしたいと思います。

住民票
抜く
住民票
残す
住民税なし
(1月1日時点で転出済みの場合)
あり
国民健康保険料なしあり
国民年金なし / 任意継続可能 あり
義務教育(小中学校)除籍在籍

住民票を抜く場合

海外に1年以上滞在する場合は、原則として海外転出届を市区町村に提出し、住民票を抜く必要があります。転出届を提出し住民票を抜いた場合「除票」となり、住民税、国民健康保険、国民年金の支払い義務はなくなります。 但し、住民票を抜いた場合でも、1月1日時点で日本に住民票がある場合は、前年の1月1日から12月31日まで1年間の収入等にもとづいた税金を支払う義務が生じます。(地方税法第39条) 逆に1月1日時点で海外に転出している場合は、前年度分の住民税の支払いは必要ありません。

ちち
ちち

転出届は転居の14日前に出せるので、年をまたいで出国する人は、12月中に出しておくといいってことか。

また住民票を抜いた場合、国民年金の支払いがなくなり、それに伴い受給年齢になった時に受け取れる額も減ってしまいます。減額になることを避けたい人に向けて、住民票を抜いた場合であっても任意で国民年金の支払いを継続できる制度があります。

国民年金の任意継続の仕方:「国民年金被保険者関係届書」に記入し、お住まいの市区町村の窓口で手続きをしてください。(日本年金機構: 国民年金の任意加入の手続き(日本の年金制度への継続加入)参照)

そして国民健康保険については、転出届を出したあと、14日以内にお住まいの市区町村で資格喪失の届出を出し、保険証を返納する必要があります。

また義務教育下のお子さんがいる場合、学校についても住民票を抜いた時点で「除籍」という扱いになります。

それに伴って気になるのが、児童手当。基本的に、児童が海外に住んでいる場合は、児童手当は受給できません。

ただし、受給者の児童が留学を理由として海外に住んでいて、下の要件をすべて満たしている場合は、例外として、その児童の手当を受け取ることができます。(参照:こども家庭庁 児童手当Q&A, Q10)

① 住民票を抜いた前日までに日本国内に3年以上継続して住所があった

② 教育を目的として海外に居住し、父母(もしくは未成年後見人)と同居していない

③ 住民票を抜いた日から3年以内である

※ 詳しくは受給者が住んでいる市区町村に相談してください。

家族で移住する場合、②の項目に該当しないため、受給は難しいと言えるでしょう。

住民票を残す場合

1年未満の海外滞在については、住民票を抜かなくてもよいことになっていますが、1年以上の場合は転出届を出すことになっています。しかし、1年以上海外に滞在していても、様々な理由から住民票を残している人もいます。これについては、特に罰則を受けたと言う声は聞かないですが、よく考えて住民票をどうするか決める必要があります。

住民票を残した場合、海外移住後も住民税、国民健康保険、国民年金の支払い義務があります。

それにも関わらず、住民票を残す人には、どんな理由があるのでしょうか。

海外移住で住民票を残す人の主な理由:

・国民健康保険を利用したい

・年金の支払いを継続したい*

・国内の所得がなく、そもそも税金や保険料の負担が少ない  ほか

国民健康保険を利用したい

住民票を抜くと、国民健康保険も資格喪失の届出を出して保険証を返納する必要があります。つまり、一時帰国時に日本の医療機関にかかった場合、医療費が全額自己負担になってしまいます。

海外移住後も、日本に一時帰国して定期検診(検査)を受ける必要があるなどの理由で、国民健康保険を利用するために住民票を残す選択をする方もいます。

また国民健康保険があると、海外滞在中に現地の病院で医療行為にかかった場合、その医療費を、あとから払い戻しができる「海外療養費制度」を利用することも出来ます。(日本国内で保険診療と認められる場合に、全額ではなく日本で同じ医療にかかった場合の相当額が払い戻される)

詳しくはこちらを参照:海外療養費制度とは?

年金の支払いを継続したい

20歳以上60歳未満の学生・自営業者・無職の方等(国民年金第1号 被保険者)は、国民年金に加入することが義務づけられています。(加入期間は20歳〜60歳までの原則40年間)

年金支払い月額一律:16,520円 (日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」参照) 

しかし住民票を抜くと、年金の支払い義務はなくなります。国民年金において、老後に受け取る年金のことを「老齢基礎年金」と言い、満額で受け取れる場合は、66,250円/月です。(67歳以下の方・令和5年度)。移住期間に年金の支払いを長期間止めてしまうと、受給年齢になった時に受け取れる金額が減ってしまいます。

例えば、移住期間を10年間とし、その間の年金支払いをしない場合の受給金額を試算したところ、49,687.5円/月となり、年間では19万8,750円の減額になりました。(ke!sanで試算)

その状況を避けたい人は、移住後も国民年金の支払いを継続できます。住民票を残す場合は、もちろん年金の支払いは続きますが、「住民票を抜いた場合」でも「任意継続」の申請をすれば、年金の支払いを継続できます。

国内所得がないため、そもそも住民税などの支払い負担が少ない

住民税と国民健康保険料、年金の支払いは、前年の所得額によって免除や減額になることがあります。

【住民税が非課税になる場合】

前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方

・35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計)+31万円 以下

・45万円以下 (同一生計配偶者および扶養親族がいない場合)

*同一生計配偶者とは・・・生計が同じである配偶者の前年の合計所得金額が48万円以下の者。

(東京23区の場合・参照:東京都主税局 個人住民税)

【国民健康保険料が軽減される場合】

国民健康保険料は、加入者の所得に応じて負担する所得割額と、加入者一人ひとりが均等に負担する均等割があります。

国民健康保険料の内訳は、(1)医療分 (2)支援金分 (3)介護分 の3つです。

計算方法や料率は市区町村によって異なりますので、お住まいの市区町村のサイトで確認してみてください。こちらは新宿区のサイトから引用しました。

医療支援金介護(40~64歳が該当)
均等割45,000円
×世帯の加入者数
15,100円
×世帯の加入者数
16,200円
×世帯の加入者数
所得割世帯の加入者全員の算定基礎額×7.17%世帯の加入者全員の算定基礎額×2.42%世帯の加入者の算定基礎額×1.75%
算定基礎額・・・総所得金額等から基礎控除の43万円を引いた額    (新宿区令和5年保険料率等より)

所得がない場合は、所得割が0になり、均等割のみの支払いになります。

また均等割も所得によって7割、5割、2割削減されます。

例えば、夫婦(ともに40歳以上)と小学生の子ども1人の場合

・45,000円×3人=135,000円(医療)

・15,100円×3人=45,300円(支援金)

・16,200円×2=32,400円(介護)

135,000円+45,300円+32,400円=212,700円

これに所得がない場合は、7割軽減され、212,700円×(1-0.7)=63,810円/年 まで軽減されます。

国民年金の支払いが免除になる場合

所得がなく年金の支払いができない場合は、「全額免除」 または「一部免除」する制度があります。

全額免除4分の3免除半額免除4分の1免除
免除額16,520円12,390円8,260円4,130円
保険料0円4,130円8,260円12,390円
出典: 日本年金機構

状況によって上記にある1/4〜全額免除かどうかが決められ、免除期間も老齢基礎年金の支払い実績の期間として認められますが、受給時の金額は満額の場合より減額されます。免除を申請する際は、「国民年金保険料免除申請書」を住民票がある市区町村の国民年金担当窓口もしくは年金事務所に提出します。

上記の手続きをするためには、免除を受けられる額に該当する収入かを確定申告をして証明する必要があります。ただ、住民票を残していることで、マイナンバーも保有しているため、e-Taxでの確定申告が可能になります。(e-Taxで確定申告する際、操作手順上マイナンバーのスキャンが求められるため)

住民票を抜いた場合・・・現状はマイナンバー返納* → e-Tax利用不可(*デジタル庁の資料によると2024年から海外においてもマイナンバーカードを継続利用できる方向で整備中。更に在外公館においてカードの新規交付や更新ができるようになる。)

住民票を残した場合・・・マイナンバー保持 → e-Tax利用可能  

住民票を残した場合の学校への手続き

義務教育下の子どもを連れて海外移住する際に、住民票を残すことにした場合は、住民票がある市町村での学齢簿に児童の名前が残り長期欠席扱いになります。

はは
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「日本にいながら、学校に通っていない」という扱いになるってことか。

文部科学省は、学校への指導要綱として住民票を残したまま転出した児童の扱いをこう記しています。

保護者に国外転出の期間について確認ができない場合、転出してから1年までは欠席として、1年を超えた場合には、居所が1年以上不明であるときと同様、在学しないものと同様に取り扱い、学齢簿には、居所が不明である旨、異動事項欄に記入し、就学義務の猶予又は免除のあった者と同様に別に簿冊を編製する

(文部科学省 就学事務Q&A: 学齢児童生徒が国外に転出した場合における学齢簿や学籍の取扱いについて より)

海外移住をしている方の中には、市区町村に住民票の住所(たとえば実家)に、児童相談所の方が児童の様子を見に訪ねて来られたというケースも聞きます。

ちち
ちち

そうならないように、住民票を残しながら、国外転出することを自治体に伝える方法はあるのかな?

住民票を残しながら、海外転出で日本で就学しない旨を申請する方法を、市区町村によってはホームページなどで公表しており、書類のダウンロードも可能です。書類の名称が異なるので、検索が難しい場合は、お住まいの自治体に問い合わせたほうがよいかと思います。

ちなみに筆者が自治体のホームページで見つけたものを抜粋しました。

東京都新宿区

不就学申出書:”留学等やむを得ない事情で新宿区内に住民登録を残したまま海外で就学する場合、学校運営課に「不就学申出書」の届出をお願いいたします。”  

新宿区:「海外での就学(不就学申出)」より

東京都江戸川区

海外学校入学・在籍届:”江戸川区に住民登録があるが海外に居住し、江戸川区立小・中学校へ就学されない場合は届出をお願いします。”           江戸川区:「海外学校入学・在学届 より

大阪府吹田市

就学に関する申請(届出)書:”現在就学している学校へ出国する旨をご連絡ください。あわせて学務課へ「就学に関する申請(届出)書」の提出が必要です。”

吹田市:「入学・転校等の手続き(よくある質問)」より

広島県広島市

国外居住(予定)届:”海外の学校に就学される場合には、お住まいの学区の学校に御連絡の上、教育委員会学事課へ「国外居住(予定)届」を御提出ください。詳しくは学事課へお問合せください。”

広島市:「広島市立以外の学校(国立・私立・海外の小・中学校)への就学について知りたい。」より

まとめ

住民票を抜く方がいい?残す方がいい?と言う疑問に対して、最適解はありません。それぞれの状況によって相応しい選択があるかと思いますので、よく調べたりお住まいの市区町村へも足を運んで相談することが大切かと思います。少しでも皆さんの情報収集のお手伝いになったら嬉しいです。

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